【アニメ】ベターマン レビュー

アニメ

1999年のテレビアニメ『ベターマン』、前年完結した『勇者王ガオガイガー』の監督米たにヨシトモ、そして木村貴宏(キャラデザイン)、大河原邦男(メカデザイン)、田中公平(音楽)等々、『ガオガイガー』の制作陣が多数続投、『勇者シリーズ』にお馴染みのサンライズ第7スタジオから生み出された異色作であります、そして世界観はガオガイガーと共有し、後に両作品のコラボ続作『覇界王~ガオガイガー対ベターマン~』もこの繋がりで実現しました、自分はガオガイガー大好きなので、覇界王を読むための前準備として、初めて本作を観ました、直撃世代なのに未だに観たこと無くて、25年後やっと初見視点で観たら「もっと早く観るべきだったわ…!」っていう感想で、色んな意味で自分にとって最高に面白い作品でした。

Cacko
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『ベターマン』のテーマと表現手法について

本作のテーマは「生、愛、死」で、『ガオガイガー』にも重要なデーマとされています、同じテーマと言っても、勇者シリーズの一作品として、全体明るく熱い『ガオガイガー』に対して、『ベターマン』は暗い基調かつ不気味な表現で、独特な雰囲気を醸し出しています、何故なら本作の制作コンセプトは「恐怖」だからです、手法的に言えばSFホラーに近いかもしれません、ただ、調べたらテレビ放送当時は深夜1時15分からの番組で、ホラー作品にはピッタリの時間帯ですが、アニメ…特に戦闘物のアニメでは、ホラー映画のような怖さを出すのは中々難しいと思います、しっかりホラー的な作りなのに、絵面的に追い付かないのは難点だったんです、自分はホラー好きで、正直怖いとはやや言いにくいですが、それでも音声と画面構成、カメラワークから伝わってきた「不気味さ」は全編通して上手く出来て、「頑張ってるな」って、本当に凄いと思います。

『ベターマン』のあらすじ

2006年、「アルジャーノン」という病気かどうか不明な異常現象が世界的に蔓延しています、アルジャーノンに罹った人は性格激変や自殺衝動が発生したり、反人類的破壊行動をしたりします、厄介なことに、症状出るまでには検出方法が一切ない、この正体不明な現象について調査するのは研究機関「モーディワープ」、それと現場対応等の下請け会社「有限会社アカマツ工業」です。

主人公の蒼斧蛍汰は普通の高校生で、ある日学校のクラスに転校生がやってきて、偶然なことに、転校生は小さい頃に引越しのため10年以上連絡が途絶えた幼馴染の彩火乃紀でした、小さい頃には仲良かったのに、何故か態度が冷たくなった火乃紀ですが、実は現在アカマツ工業で調査/戦闘両用のニューロノイド「覚醒人1号」のパイロットとして務めています、そして色んな偶然により、アカマツ工業が調査中、集団自殺が起きたアルジャーノンの事件現場ー地下遊園地「ボトム・ザ・ワールド」に蛍汰が遭難し、火乃紀と共に覚醒人に搭乗して一連の危機を乗り越えつつ現場から脱出しようとすると、やがて覚醒人が稼働の限界に到達、同時に巨大な敵が襲ってきた、危機一髪の時に、謎の男子が現れ、巨大な怪獣に変身して敵を倒してくれた…あれはまさか…伝説のベターマン!?

以上、第1話のあらすじでした、その後アルジャーノンだけじゃなく、新たな謎や敵が次々と襲ってきて、アルジャーノンは一体何?ベターマンもまた何なの?生物の生と死を巡ってすべての謎が解明されます!

『ベターマン』登場キャラ

Cacko
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ここで序盤の主要登場キャラを少し紹介します

蒼斧蛍汰(あおのけいた):前述の通り普通の高校二年生、偶然でアルジャーノンの事件に巻き込まれて、そしてヘッドダイバー(ニューロノイドのパイロット)としての才能が発見され、モーディワープとアカマツ工業に協力する立場となりました、オタク気質でゲームとミリタリー好き、普通の若い男子と同じスケベな一面があるものの根はいい人、幼馴染の火乃紀とは両想いなのに、どちらも純情でずっと友達以上恋人未満のままです、物語の最初は一般人視点で、事態の重大さを分からずに、不謹慎な言動も多々ありましたが、火乃紀を守るという一筋の信念で、物語の後半から彼なりの成長も見せられました。

彩火乃紀(さいひのき):蛍汰の幼馴染、明るくて陽気な子でしたが、4年前にアルジャーノンの研究をする為にインドのアジャンター石窟へ赴いた両親と兄貴3人は行方不明になり、それ以来無愛想な性格になって、家族を探し出す為にモーディワープの麻御に協力し、そして覚醒人のヘッドダイバーになりました、うまく伝えられませんが実は蛍汰のことが好き、自己肯定感低めで「私…バカだから」という口癖があります、蛍汰との共同行動によって心を段々開いていき、辛い過去を受け入れることが出来て、自分の本当の気持ちも分かってきました。

都古麻御(みやこあさみ):沈着冷静な生体医工学者、モーディワープ監察部所属、同社とアカマツ工業の連絡窓口役にもなっています、アルジャーノンの謎を解くのが自分の使命だと思いつつ、段々底なし沼にハマっていく、ベターマンについては何か分かるような様子が窺えます、そして人に言えない過去があるらしいです。

阿嘉松滋(あかまつしげる):アカマツ工業の社長、豪快な性格の持ち主で、天才発明家でもあった、世界10大頭脳の父親から引き継いだ発明能力の高さ、そして少数精鋭の部下達により、中小規模のアカマツ工業でも世界最先端の技術力を誇ります、ただ、仕事に情熱を注ぎすぎた挙句、妻に見捨てられることにもなって、現在アルジャーノンの調査を中心に生活が回っています。

紗孔羅(さくら):アカマツ工業と共同行動する若い少女、場の色んな意志を読める「リミピッドチャンネル」という能力を所持します、大量な情報が常に頭の中に流れてくる故に、精神を安定させるのは困難になり、そのため、マニージマシンで毎日一定時間の処置は必要です、更に重度なADHD(注意欠陥・多動性障害)体質で、生まれてから長期の入院生活を過ごしました、友達がいないため優しく接してくれる蛍汰に好感を持ちます、普段は「リミピッドチャンネル」を経由して、色んな未来事象の予言やベターマンの情報を発していますが、ヘッドダイバーとしての才能も持っているので、緊急時の戦闘にも対応出来ます、ただ体が弱いため長期戦は不向きです。

八七木翔(やなぎしょう):モーディワープフランス支部から帰国した、ニューロノイド「ティラン」のヘッドダイバーです、高度な操縦技術と共に「擬式」というある種の催眠術のような能力を所持し、ニューロノイド搭乗しなくてもある程度の戦力を発揮します、ただ、一見冷静沈着ですが、過去の大きなトラウマを持っていて、精神攻撃に弱い一面もあります、なお、楓とは交際中ですが、実際はもっと深い絆があり、二人の間には「共生関係」という認識です。

紅楓(くれないかえで):同じくモーディワープフランス支部から帰ってきた、「ティラン」のもう一人のヘッドダイバー、同時にエスパでもあり、数千万人に一人の逸材とも言われています、空間探知や捜索活動に活躍するダウジング能力以外にも、脳内短期記憶領域のインパルスパターンを意図的に長期増強(LTP)出来る能力を持っています、これらの能力により、ハッキングのような応用も出来ます、普段は飄々とした仕草ですが、それは何かの訳があるのか?

ラミア:第1話蛍汰と火乃紀が危機に陥った時に現れた、「ベターマン」に変身する謎の男、その後、蛍汰達を色んな危機から何回も救ってくれた、最初は名前不明ですが、紗孔羅によると人間形態は「ラミア」、ベターマンの時に「ネブラ」と言います、「リミピッドチャンネル」を通して意思疎通するので、蛍汰達の動向を常に紗孔羅を経由して探っています、何の目的で行動しているか不明ですが、火乃紀の人身安全を最優先事項として動いてる様子が窺えます、そして火乃紀のお兄さんを彷彿とさせる外見で、色んな謎に包まれる存在です。

「ベターマン」と「ニューロノイド」

アルジャーノンの謎を解きつつ、物語の半分はアクションパートで構成されてます、そして戦闘シーンの主役となった「ベターマン」と「ニューロノイド」も簡単に紹介していこうと思います。

ベターマン:環境の変化によって、最もベターな姿に変身する生物と言われました、普段は人間の姿で、アニムスの花の実を食することにより、音波で敵を消滅する、そして飛翔能力を持つ「ネブラ」、水中戦得意の「アクア」、最強形態「フォルテ」等々、色んな形態に変身することが可能です、人間の姿でも色んな能力を持っていますが、戦闘時は主に怪獣の形態で対応します、敵の弱点を検知して一撃必殺という戦い方で作中に殆どの時は無双状態であります、ただ、変身後数時間の休眠が必要で、そして休眠中は無防備状態になります、普段いくら強くても完全無敵ではありません、さらにアニムスの実自体は無限ではなく、劇中に必要な実がないせいで苦戦に陥った場面は幾つかありました、そんなアニムスの実、それとアニムスの花はどうやって出来たのか?ベターマンとはまた何の関連性があるのか?

ニューロノイド:「デュアルカインド(=ヘッドダイバー)」同士の間に発生した「デュアルインパルス」、それと謎の液体「リンカージェル」によって駆動するニューロノイド、劇中にはアカマツ工業製の「覚醒人1号」とモーディワープ製の「ティラン」2体が様々な場面で活躍していました、機体の上下対称位置にある二つの操縦席から、調査用の「アクセプトモード」と活動用の「アクティブモード」、それぞれのメインコントロールが出来ます、操縦は全部音声コマンドで行われます、稼動時間やエネルギーの消耗具合によってリンカージェルの純度が下がります、限界まで下がると行動不能になり、再起動するにはリンカージェルの透析が必要になります、『ガオガイガー』や勇者ロボット達と比べて、ニューロノイドの外見はあまりにも可愛くて、「ちゃんと戦えるのかな?」「しかもベターマンもいるし」と最初は疑っていたんですが、滅茶苦茶強かった!結果的にベターマンとニューロノイドの活躍シーンは良いバランスで観られたんです。

『ベターマン』の色んな魅力

まずはキャラクター、木村貴宏先生が描いた女の子達がとにかく可愛くて、そしていつも謎の色気が漂っています、もちろん男子キャラ達も魅力的、マッチョ、美男子、オタク、渋オジ等、バリエーション豊富で、観飽きることまずない、それとキャラの外見も良いけど、リアルな内面描写も語らずにはいられない、本作のキャラほぼ全員、最低でも一回やらかした場面があって、万能キャラはまずいない、こうした色んな失敗からの成長こそ共感させ、心を動かしますね。

そして音楽、田中公平先生の音楽と言えば、盛大で、勇ましいものが印象的かもしれませんが、本作には不気味で怖い曲が多くて、雰囲気作りに凄く役に立ちまして、『ベターマン』の世界観を構築出来た重要なパーツでした、とは言え戦闘曲になったら、田中節全開でしっかり熱くなり、カッコ良い戦闘シーンをより一層迫力を増やしていく、さらにキャラや機体、形態等の専用曲も多く用意されていて、「ここまであるのか!」と思うくらいの盛り込みです、戦闘シーンと言えば、前述の音楽もそうですが、作画も流石のサンライズというか、そもそも『ガオガイガー』の制作陣なので、絵面的に既に迫力満点でテンポも良い!結果的にアツすぎたせいで怖さがぐっと減ってしまって…諸刃の剣ですね…

「恐怖」というコンセプトで制作された本作ですが、面白いことに話の殆どは「夜」で進んでいます、例え昼間のシーンであっても大体曇りや雨の日になります、それとモブキャラの顔はすべて陰影になり、アニメで怖さを表現するのが難しいので、少しだけでも不気味さを増幅させるこだわりが感じられますね、そして全編26話の物語は「闇編」、「バイオ編」、「超人編」、「闇編2」の4つのパートで分けられ、「それぞれのパートにそれぞれの敵と展開が待っている」という構成なので、常に新鮮な気分で観れるのも良い、その上に物語の本筋もしっかり進んでいきます、最初は難解な用語沢山出てきて、視聴1周目の時にまだ完全に理解しきれなくて、幸いなことに、この作品殆どの伏線がしっかり回収されていて、色んな用語や状況について説明の場も要所要所で設けられたので、2周目以降観てほぼ全部分かってきてスッキリした!

それと観る前にロボものだと思っていたんですが、米たに監督のインタビューによると、本作最初には「怪獣ものをやりたい」というシンプルな発想から始まった、そして異様なもの、気持ち悪いもの等が好きで、そういう要素から何か面白いものを作って、何かの価値観を伝えれば尚更良いので、『ガオガイガー』にも大きなテーマとされた「生、愛、死」を完全に違うテイストで解釈することになりました、そして結果的に『ベターマン』と『ガオガイガー』は陰と陽のような関係にもなって、冒頭で伝えた通り、自分は『ガオガイガー』大好きです、しかし『ベターマン』はある意味より深刻なものを自分の中に残してくれた、生老病死の無常…種の存続や進化の為に個体の犠牲の軽さ或は重さ、進化の意味等々、納得せざるを得ないシーンなくはないんですが、それらの言葉の意味を理解して更に「生きてて良かった」と実感できるという今作の醍醐味でした、多分万人向けの作品ではないと思いますが、自分的にはドンピシャでした、今ならバンダイチャンネルでは見放題で、アマプラではレンタル提供です、それ以外の選択肢として、本作独特な雰囲気と緻密な世界観を吟味するのに設定資料付きの円盤もオススメです、この記事読んで、少しだけでも興味が湧いてきてくれれば幸いです~それでは!

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